今回のメルマガ【2024年3月号】
目次
1 TIT メルマガ動画解説:No.45:2024年3月号
(労務×安全配慮義務×労災×法改正)
・【前編】化学物質管理者の選任義務化などの改正対応
・【後編】化学物質管理者の選任義務化などの改正対応
2 「給与ファクタリング」は違法?企業はどうすべきか。
1 TITメルマガ動画解説:【前編】化学物質管理者の
選任義務化などの改正対応
1 TITメルマガ動画解説:【後編】化学物質管理者の
選任義務化などの改正対応
2 「給与ファクタリング」は違法?企業はどうすべきか。
本日は、
給与ファクタリングが最高裁において「貸付け」に当たり違法とされたケースを紹介します。刑事の裁判例ですが、給与ファクタリングの場合の給与の支払先についても言及があるため、その部分を中心に企業の対応策を解説します。
第1 事案の概要と裁判所の判断
この事案では、
法人Aの名称で被告人が行なっていた「給与ファクタリング」が、貸金業法及び出資法における「貸付け」に該当するか
が争点となりました(該当した場合は、登録を受けずに貸金業を営んだ点及び高金利である点で違法となる)。
結論としては、
被告人が行っていた「給与ファクタリング」が貸金業法及び出資法における「貸付け」に該当する
と判断されました。
なお、この事案において、「給与ファクタリング」とは、「労働者である顧客から、その使用者に対する賃金債権の一部を、額面額から4割程割り引いた額で譲り受け、同額の金銭を顧客に交付するというもの」です。
本件では、形式的には債権譲渡の形が取られていましたが、契約上「希望する顧客は譲渡した賃金債権を買戻し日に額面額で買い戻すことができること」、及び「顧客が買戻しを希望しない場合には使用者に債権譲渡通知をするが、顧客が希望する場合には買戻し日まで債権譲渡通知を留保すること」が定められており、全ての顧客との間で、買戻し日が定められ、債権譲渡通知が留保されていました。
注目すべきは、裁判所が、
⑴ 「労働基準法24条1項の趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同項が適用され、使用者は直接労働者に対して賃金を支払わなければならず、その賃金債権の譲受人は、自ら使用者に対してその支払を求めることは許されない…から、被告人は、実際には、債権を買い戻させることなどにより顧客から資金を回収するほかなかった」
⑵ 「顧客は、賃金債権の譲渡を使用者に知られることのないよう、債権譲渡通知の留保を希望していたものであり,使用者に対する債権譲渡通知を避けるため、事実上、自ら債権を買い戻さざるを得なかった」
とした上で、「給与ファクタリング」が実質的には被告人と顧客(労働者)との間の返済合意がある金銭の交付と同様の機能を有し、「貸付け」に当たると判断したことです。
(以上につき、令和5年2月20日最高裁第三小法廷決定)
第2 企業の対応策
上記最高裁の判断でも示されているとおり、労働基準法24条1項において、賃金の支払いについて「直接払いの原則」が定められており、企業は賃金の支払いを労働者に対して直接行わなければなりません。そのため、たとえ労働者がファクタリング業者に賃金債権を譲渡したとしても、ファクタリング業者が企業に対して賃金の支払いを請求することはできません。ファクタリング業者から企業に対して賃金の支払請求があったとしても、企業は労働者に賃金を支払う必要があります。
なお、給与ファクタリングと称して賃金債権を買い取り、高額な手数料を得て実質的な貸付けを無登録で行う業者については、法外な利息の請求や勤務先への違法な取り立て等のトラブルが問題となっており、警視庁や金融庁も注意を呼び掛けています。企業としては、無用なトラブルに巻き込まれることを避けるために、無登録のファクタリング業者を用いないように労働者に注意喚起するべきです。
(参考)
警視庁HP:
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/yamikin/kyuyofakuta.html
金融庁HP:
https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html
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