~目次~
0. マニュアル
1.賃金
1-1.休業手当<一般論>
新型コロナウイルスの影響により、(やむを得ず)労働者を休業させるか、この場合休業手当の支給義務はあるのか、等を検討する場面が出てくる可能性は否定できません。このような場合に備え、休業手当にまつわる各要件を、以下のとおり整理します。
種類 |
不可抗力 |
労基法26条 (休業手当) 使用者の「責めに帰すべき事由」 |
民法536条2項 (危険負担) 使用者の「責めに帰すべき事由」 |
要件(解釈) |
①その原因が事業の外部より発生した事故であること ②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること |
民法上の解釈よりも広く、民法上は使用者の帰責事由とはならない経営上の障害も、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは、それに含まれる |
故意、過失または信義則上これと同視すべき事由 |
支給率 (賃金または休業手当) |
0% |
60% |
100% |
具体例 (厚労省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」より) |
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①自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合 ②「帰国者・接触者相談センター」でのご相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合 ③発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合 |
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※注:上記の具体例は、一般的な場合の例であり、個別具体的な事情によって結論が異なり得ることにご留意ください。
※注:当事務所は、労働問題につき使用者側の法律事務所ですので、個別具体的な事情を踏まえ、使用者側の視点での助言(無料メルマガに掲載している一般的内容につき、それを発展させた助言)をさせていただいています。
1-2.緊急事態宣言と休業手当<分類>
休業手当の有無については、緊急事態宣言の解除の有無に応じて、次のような分類を踏まえ、分析すべきです。
イ 区域 ア 発症者 |
緊急事態宣言の解除区域 |
ウ 緊急事態宣言区域内 |
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判明した |
A 発症者 B 濃厚接触者 C それ以外の労働者 →第2 |
ア休業要請 イ継続要請 ウ協力依頼 エいずれでもない |
A 発症者 B 濃厚接触者 C それ以外の労働者 →第4 |
判明していない |
B 濃厚接触者 C それ以外の労働者 →第3 |
ア休業要請 イ継続要請 ウ協力依頼 エいずれでもない |
B 濃厚接触者 C それ以外の労働者 →第5 |
この点について興味をお持ちの方は、当事務所弁護士の見解を次の雑誌に掲載しておりますので、ご一読いただけますと幸いです。
「4つのケース別にズバリ解説!新型コロナウイルスに備える労務管理のポイント」
「そら」2020年5月号(労働調査会様)
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682489/
但し、濃厚接触者の定義が変更されていますので、注意すべきです。
1-3.休業手当と同一労働同一賃金
1-4.休業手当と正社員の待遇相違
1-5.雇用保険の特例措置
東日本大震災に伴う雇用保険失業給付の特例措置について
「災害時における雇用保険の特例措置」があります。
災害により休業を余儀なくされた方、または一時的に離職を余儀なくされた方が、雇用保険の失業手当を受給できる特例措置があります。
- 事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、賃金を受けることができない方については、実際に離職していなくとも失業給付(雇用保険の基本手当)を受給することができます。
- 災害救助法の指定地域にある事業所が、災害により事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた方については、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、失業給付を受給できます。
1-6.厚生労働省の情報
2. 就業制限と休業
2-1.就業制限
☆ 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
☆ 重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
※高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)など)がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方
☆ 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)
2-2.就業制限と解除
2-3.妊婦と休業
3.労災
3-1.社員が新型コロナウイルスに罹患した→労災になるか。安全配慮義務として、注意すべき点。
1 問題の所在
社員が新型コロナウイルスに罹患した場合、労災になるか、また、企業は、安全配慮義務として、どのような点に注意すべきか。が問題となります。
2 判断基準
この点については、次の基準が適用されます(2020年4月30日時点)
<国内の場合>
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分類 |
労災給付の対象の有無 |
ア |
医療従事者等 |
患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、 介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。 |
イ |
医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの |
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。 |
ウ |
医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの |
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。 この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況 等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。 |
(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務 (イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務 |
(基補発 0428 第1号 令和2年4月 28 日より、抜粋)
https://www.mhlw.go.jp/content/000626126.pdf
3 企業の対応
企業としては、例えば、上記ウの場合、少なくとも、次の業務につき、リスク対応策を講じるべきといえます。
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通達の例示 |
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和2年5月29日時点版 |
(ア) |
複数の感染者が確認された労働環境下での業務 |
請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。 |
(イ) |
顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務 |
小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。 |
(ウ) |
他の業務 |
他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断します。 |
(新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和2年5月29日時点版より、抜粋)
4 業界ごとのリスク対応策
具体的には、次の業界団体が出している、ガイドラインを参照しつつ、自社に実現可能か否かを踏まえ、対応策を講じるべきです。
3-2. 安全配慮義務の履行として業界ガイドラインが参考になるが、どのようなものがあるか。
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業種別 |
団体名 |
1 |
オフィス |
経団連 |
2 |
生活必需物資供給 |
オール日本スーパーマーケット協会 など多数 |
3 |
運送 |
全日本トラック協会、 日本バス協会、 全国個人タクシー協会 など多数 |
4 |
医療 |
全日本病院協会 など多数 |
5 |
他の業界 |
多数(下記のURL参照) |
上記のURLは、こちらです。また、一部の例示にすぎませんので、詳細は、下記をご参照下さい。
4.懲戒処分
4-1マスク着用の義務付けと懲戒処分
マスク着用を義務付けているにもかかわらず、正社員が、
1 問題の所在
マスク着用を義務付けているにもかかわらず、正社員が、
2 判断基準
懲戒処分については、いわゆる罪刑法定主義、効力不遡及の原則、
3 企業の対応
現在、マスクを入手することは、(以前ほどではありませんが)
そのため、例えば、「企業が、マスク配布しているのに、
なお最近は、ハンカチその他の素材で、